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2020年のノーベル化学賞「CRISPR-Cas9ゲノム編集法の開発」

 2020年のノーベル化学賞は「CRISPR-Cas9ゲノム編集法の開発」がテーマとなり、Emmanuelle Charpentierl、Jennifer Doudnaの2博士が受賞されました。ゲノム編集法は生命の設計図であるDNAの配列を書き換える技術であり、様々な応用が考えられます。基礎研究の領域では、標的遺伝子の破壊(ノックアウト)、挿入(ノックイン)、ピンポイントの書き換えにより、標的遺伝子の産物(タンパク質やRNA)の機能解析に用いられます。また、植物や動物の品種改良にも応用されています。さらに、疾病に関連する遺伝子を操作して治療することも期待されています。今回の2博士の貢献はゲノム編集ツールであるCRISPR-Cas9の開発であり、従来技術とは比較にならないほど簡便に標的遺伝子を切断することを可能にしました。
 一方、核酸分析化学研究室でもゲノム編集に関連する研究を行っています(研究テーマ3)。私たちの研究は、標的遺伝子を切断せずに編集を可能にする方法の開発です。CRISPR-Cas9法の問題は、標的遺伝子以外の部位における切断(off-target作用)と標的部位・非標的部位における意図しない変異誘発であり、医療への応用時には重篤な副作用が懸念されます。私たちが研究している標的遺伝子を切断せずに編集を可能にする方法が実用化されれば、安全性の高い治療法の確立につながるため、私たち自身がその成果を期待しています。


2015年のノーベル化学賞「DNA修復のメカニズムの解明」

 2015年は、大村智先生がノーベル生理学・医学賞を、梶田隆章先生がノーベル物理学賞を受賞されました。日本人科学者として大変喜ばしいことです。
 
ところで、2015年のノーベル化学賞は「DNA修復のメカニズムの解明」がテーマとなり、Tomas Lindahl、Aziz Sancar、Paul Modrichの3博士が受賞されました。核酸(DNA・RNA)は化学物質であるため、化学反応により修飾されてしまいます。例えば、活性酸素や紫外線により化学修飾されたDNA(DNA損傷)は遺伝情報の維持に不可欠な塩基対形成に大きな影響を及ぼし、細胞が分裂する際に必要なDNA複製の過程において「誤った塩基対」形成を誘発する可能性があります。このようなDNA損傷を除去する機構が、DNA修復と呼ばれています。核酸分析化学研究室でもDNA損傷やDNA修復に関連する研究を行っていますので(研究テーマ1・2)、今回の3博士の受賞は、この領域の重要性を示したものとして喜んでいます。

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